【執筆の裏側】第7話:全集中!
改めて執筆を最後までやり遂げることを固く決意した私は、これまで以上に執筆に集中しました。これまで減らしていた仕事をさらにセーブし、1日の全てを執筆に捧げました。
そして、ようやく第4章のサンプルサイトと原稿を仕上げることができました。しかし、これで終わりではありません。残りはさらに難易度の高いCSSアニメーションなどの動作を含む第5章と、実案件をモデルにした本番と同じレベルの第6章のサンプルサイトを作らなければなりません。
以前なら目の前の高い山を見上げて目眩がしそうになっていましたが、何があっても最後までやりとげると決意した今はやる気に満ち溢れていました。
終わりのことを考えるよりも、今、目の前のやるべきことに真剣に集中する。それにより迷うことなく集中して執筆を続けることができました。私は休むことなく第5章のサンプルサイト制作へ取り掛かりました。
第5章はCSSアニメーションやJavaScript、jQueryを使った、動きのあるWebサイト制作です。特に実務ではLPなどで動きを取り入れることが多いので、5章はレジャー向けのLPを制作しながら実務でよく使う定番の動きのつけ方について学べるようにしました。
今回の書籍では、解説で学ぶだけでなく、実際の案件と同じようにデザインカンプからのコーディングができるよう、FigmaとAdobe XDのデザインデータがダウンロードできるようになっています。
5章と6章はサンプルサイトに動きが入るため、書籍内に動作仕様をまとめた仕様書のようなページを設けました。これにより、さらに実務に近いデザインカンプと仕様書からのコーディング練習もできるようになっています。
5章も何度もサイトの構成を練り直しながら、理想的な学習内容を網羅したサンプルサイトを完成させることができました。このあたりから、徐々に執筆当初のわくわくした楽しい気持ちを取り戻してきていました。
4章の執筆で悩みに悩んだ結果、目の前のやるべきことに一つ一つ真剣に向き合うことで、より良い結果が一つずつ積み上がっていくのが楽しくなってきたのです。
私は、執筆作業をしながらCodejumpを立ち上げた時のことを思い出していました。
もうあの頃から5年か〜。
おそらく、今Codejumpで学習をしている方で当時のCodejumpのことを知っている方はいないと思いますが、最初はたった3つの学習コンテンツからスタートしました。初級編、中級編、上級編がそれぞれ一つずつです。
そこから、Web制作を学習する人が挫折せずに必要なスキルを身につけるためにはどうしたら良いかだけを考え、一つ一つ練習サイトの数を増やしていきました。
そして、気がつけば入門編から上級編までの練習サイトの種類が充実しただけでなく、Codejump Proという実案件をもとにしたプロ向けのサービスまででき、多くの人に利用してもらっています。
あの頃は大変などとは思わずに、ただ目の前のやるべきことを夢中になって真剣に取り組んでいただけでした。
ちょうどその頃と同じような気持ちに戻り、使う人の役に立つという感覚を改めて思い出しました。
そんなことを考えながら執筆に取り組んでいると第5章の原稿もあっという間に完了しました。もう大変だという思いは全くありません。山を登るなんていう考えも吹き飛んでいました。
実は山なんていうものは最初から存在していなかったのです。もともと平らな道を楽しく歩いていただけなのに、いつの間にか自分の心中で勝手に大きな山を作り出し、そこで右往左往していただけだったのです。
第5章の執筆を終えるとそのまますぐに第6章の執筆に入りました。第6章は本書の締めとなる実務を想定したサイト制作です。第1章〜5章で学んだことを復習しつつ、実務で使うもう一段レベルの高い技術も学べるような練習サイトを作っていきます。この6章のサイトは私が過去に携わった実際の案件をモデルにして作成しました。
6章の執筆も休憩することなく全開で進めていきます。最終章まで来ると、ソースコードの中の細かいテクニックは1章から5章までの内容と重複している部分が増えてくるため、新しく学ぶ技術に絞って詳しく解説していくようにしました。
そして、2024年5月。
ついに待ちに待った瞬間がやってきました。第6章までの原稿が全て完了したのです。色々な苦難もあり、一時はどうなることかと思いましたが無事一通り書き終えることができました。
もちろん、実際に書籍が発売されるまでにはまだまだやることが沢山あります。しかし、原稿が一通り仕上がったことで一旦はホッと一息つくことができました。
ここからは解説図の作成に入っていきます。執筆中に保留にしていた書籍内の画面キャプチャや解説図をまとめて作成していきます。
画面キャプチャと解説図の挿入箇所は編集者さんにアドバイスをもらいながら決めていきました。こちらもかなりの量がありましたが、原稿が仕上がっている安心感もあり黙々と集中して作業を進めていきます。
そして図とキャプチャも一通り出来上がり、書籍に必要な材料が全て揃いました。執筆作業はこれで完了となり、後はデザインとして出来上がってきた原稿に対して校正を行なっていくだけとなりました。
これで一旦、自分の作業が落ち着きホッと一安心しました。後はデザインされて仕上がってきた原稿をチェックするだけ。
「それが終われば出版か〜。」
そんな軽い気持ちでいたのですが、この時、書籍を出版する上で非常に大事なことを一つ見落としていました。
そして、それが後に出版のモチベーションを急降下させていこうとは、この時はまだ予想だにしていなかったのです。