【執筆の裏側】第8話:出版やめようかな・・・
一通り執筆を終え、校正待ちとなった後はつかの間の休息を味わいました。とはいえ、ストップしていた仕事も山積みになったいたのでそれらをフル稼働でこなしていきます。
そんなこんなで慌ただしい日々を過ごしているところに、編集者さんからメールが届きました。
「そろそろ、書籍のタイトルとカバーデザインを決めましょうか。」
執筆を終えてすっかり安心し切っていた私は、書籍にとって超重要なタイトルとカバーデザインのことを完全に忘れていました。すぐに日程を調整して打ち合わせをすることになりました。
書籍タイトル
書籍のタイトルはすぐに決まりました。もともと企画書が出来上がった時点で入っていた仮のタイトルが、ほぼ本のコンセプトとマッチしていたのでそのタイトルをもとに他の案も探っていきました。
編集者さんと私で案を持ちより、どのタイトルが書籍に一番マッチしていて読者に手に取ってもらいやすいかをじっくりと考えていきます。ちなみに、最初に仮で設定していたタイトルと案で出たタイトルをいくつかご紹介します。
<企画段階で仮設定していたタイトル>
- HTML&CSS 現場レベルのコーディング・スキルが⾝につく教科書
<案で出たタイトル>
- HTML&CSS&WEBデザイン 実務レベルのコーディング・スキルが身につく集中講座
- HTML&CSS&WEBデザイン プロのコーディング・スキルが身につく実践講座
- プロになるHTML&CSS&WEBデザイン 仕事で必要なコーディングスキルが身につく
- 現場のプロから学ぶ HTML&CSS&WEBデザイン 実践コーディング講座
上記は一部ですが、その他にも色々な案が出ました。その中でも、本書のコンセプトである「仕事で通用するスキルを身につけるための実践本」という部分をタイトルで表現したいという思いは編集者さんと私の中で一致していました。
色々と検討していく中で、まずは仕事で通用するということが直感的にわかりやすい「現場レベル」というワードが決定しました。そして次に、単なる実践本ではなく入門レベルから実践レベルへと成長していく本であることから「実践入門」というワードを使うことが決まりました。
最後にタイトルの中に「Webデザイン」というワードを入れるかどうかで悩みました。コーディングに特化した専門書であるため、Webデザインというワードは外そうかという話も出ました。しかし、FigmaやAdobe XDのデザインデータを提供していることやアニメーションなどWebデザインを表現するための技術も入っているため、分かりやすく「Webデザイン」というワードも入れることにしました。
そして出来上がったタイトルが以下になります。
HTML&CSS Webデザイン 現場レベルのコーディング・スキルが身につく実践入門
ちょっと長いですが、本書の内容を的確に表した良いタイトルに仕上がったと思います。書籍タイトルの方はこんな感じで順調に決定しました。
カバーデザイン
次にカバーデザインです。
カバーデザインは書籍の顔とも言える大事な部分です。読者に手に取ってもらえるかどうかにも関わってくるため、私自身、出版のお話をいただいた時からカバーデザインは絶対に良いものにしたいという強い思いがありました。
今回は出版社と提携しているデザイナーさんにカバーデザインを担当していただけるとのことで、さっそく編集者さんとどういった方向性にするか打ち合わせを行いました。
私の思いとしては、本書のテーマである「現場レベルのスキルが身につく」という部分の”個性”が表現できるようなデザインにしたいという気持ちがありました。なので、そのあたりがうまく伝えられるようじっくりと話し合いを行いました。
いつもなら30分くらいで終わる打ち合わせは1時間半くらいかかり、ようやく1つの方向性にまとめることができました。
後は、この内容を編集者さんからデザイナーさんへ伝えてもらい、カバーデザインが仕上がってくるのを待つことになりました。
2024年9月
編集者さんからカバーデザインができたとの連絡がありました。作っていただいたデザインは全部で3案。もともとコピーなどのテキスト要素が多かったのと、実践入門という難しいポジションの本ということもあったのですが、全体の要素をうまくまとめた素晴らしいデザインが仕上がってきました。
しかし、自分の中で何かが足りない気がしました。最初に考えていたこの本の”個性”のようなものです。すぐに編集者さんに連絡をして再度打ち合わせを行いました。そして改めてまとめ直した方向性をもとに修正を入れてもらうことになりました。
数日後、2回目のデザインが届きました。前回のデザインから変化を加えてもらっており、さらに良いデザインとなって仕上がっていました。しかし、やはり自分の中でこの書籍を表す顔としてマッチしていないような気がしたのです。編集者さんの意見を聞きながら、再度話し合いを行うことになりました。
私は悩みました。
カバーデザインの正解って何だろう・・・
もちろんカバーデザインの正解など分かりませんし、正解ががあるかどうかも分かりません。しかし、自分の中ではかっこいいデザインでもなければ自分の好みのデザインでもなく、その本を必要としている読者が手に取ってくれるデザインこそがカバーデザインの役割なのではないかという思いがありました。
そして、読者が手に取ってくれるというところには、必ずその書籍の個性を表す”何か”が必要だと感じていました。ただ、その”何か”が分からないままずっと悩んでいました。
その後も何度か修正をしてもらいましたが、デザインは決まることなく時間だけが流れていきました。リミットの時は刻一刻と迫ってきます。
私は正直、かなり自分に責任を感じていました。自分もWebサイト制作という仕事をしているので、デザインに関わる機会は多くあります。そんな中で、一般的にはデザインの仕上がりはデザイナーの腕によるものが大きいと思われがちですが、実はデザインを依頼する側がいかに依頼内容を「きちんと伝えられるか」がかなり重要であると考えています。それができていないのに、最終的なアウトプットを期待するのは無責任だとさえ思っていました。
今回、できる限り書籍のコンセプトや表現したいものがしっかりと伝わるようにまとめたつもりでした。しかし、実際には自分の中でも言語化できていない部分が多くあり、その言語化できていない部分をデザイナーさんがうまくカバーしてくれるのではないかと、心のどこかで期待していた部分があったのも事実でした。
もちろん、そんな無責任なことをして期待通りのも仕上がってくるわけありません。結果として、良いカバーデザインが仕上がってきたものの、自分の期待していたものとは違うということになってしまったのです。
リミットの時間は迫ってきました。
そろそろデザインを決めなければなりません。
私は、自分自身に失望すると同時に、だんだんと暗い気持ちになってきました。執筆が決まった時から、カバーデザインは絶対に良いものにしたいと楽しみにしていたのに、もうどうすることもできません。
考えれば考えるほど暗い気持ちは膨らんでいきました。あんなにも頑張って120%のできに仕上げた原稿を、自分が満足していないカバーデザインで包むのかと思った瞬間、世の中に出すのが嫌だとさえ思ってしまいました。
気持ちの整理がつかないまま、日にちだけが過ぎていきました。それでもやはり出版する以外に道はないと思い返し、今仕上がっているカバーデザインで出版する覚悟をしました。一応、編集者さんにも相談して最後の打ち合わせをすることになりました。
打ち合わせ当日。最後の話し合いを行う中で、編集者さんが一つの案を出してくれました。そして最後にその案で一度だけデザインを試してもらうことになったのです。正直、うまくいくかどうかは分かりませんでした。しかし、できることを全て試した上でならという納得もあったのでお願いして結果を待つことになりました。
そして1週間後。
カバーデザインの最終案が仕上がってきました。背景カラーとタイトルデザインをガラッと変更したそのデザインは、これまでとは全然違う印象に仕上がっていました。そして、そこにはこの書籍特有の個性もしっかりと出ていました。
私は一目でそのデザインを気に入りました。すぐに編集者さんにも連絡し、意見を伺いしました。そしてお互いに納得ができたところで、ついにカバーデザインが正式に決定したのです。
このデザインは私自身すごく気に入っているし、何よりもこの本の”らしさ”がすごく出ているように感じています。
Codejumpの雰囲気にもピッタリとマッチしていて、とても良い仕上がりになりました。
最後はどうなることかと思いましたが、改めて編集者さんとデザイナーさんにお礼を申し上げたいと思います。
そしていよいよ、残すところは校正のみとなりました。
書籍の完成まであとわずか。
ラストスパートに向けて改めて気持ちを引き締め直しました。